LOUVRE - DNP MUSEUM LAB
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作品・作家紹介
ルーヴル - DNP ミュージアムラボ 第5回展 ファン・ホーホストラーテン≪部屋履き≫問い直された観る人の立場

© 2008 Musée du Louvre
/ Georges Poncet
17世紀にサミュエル・ファン・ホーホストラーテンが描いた《部屋履き》は、クロイ・コレクションに属する作品で、およそ3800点の素描と絵画から成る同コレクションの寄贈作品の一部でした。また、この絵はルーヴルのオランダ絵画コレクションの中でも、最も優れた作品のひとつに数えられます。

巧妙な仕掛のあるこの作品は、作者や制作年がはっきりしなかったこともあり、古来様々な解釈が寄せられてきました。19世紀には、当時より高く評価されていたピーテル・デ・ホーホのイニシアルや、1658年という年代が付け加えられることもありました。

画家が描いたのは、中産階級の家の中です。家は、オランダの風俗画の最も重要な舞台です。しかし、この風俗画は一風変わっています。人の姿が描かれていないという事実は、この作品にとても謎めいた性格を与えています。

この絵の画面にまったく人物がいないことは19世紀においても不思議に思われていたようで、よりなじみやすい画面にするため、一時は、犬が一匹と少女が一人加えられていました。この絵の特長は、空間についての考察を提案する、という独創性にあります。画家は空間に関して特別な関心を抱いていました。明白であると同時に目に見えない存在を暗示することから、その問いかけはなされます。
絵を解き明かす?
この静かな屋内には人の姿が描かれていないにもかかわらず、画家は、巧みに人の存在をほのめかすことに成功しています。様々な要素が、特にここには見えない女性の存在に関連しています。17世紀の、典型的なオランダの靴は、廊下にあわてて脱ぎ捨てられており、テーブルには一冊の本が開いたままになっています。

手前から奥へと続く部屋の中に、画家は、壁に立てかけられた箒(ほうき)のような、あまり意味深くない事物から、画中画のような意味深長なものまで、様々な物を配置しました。視線を進めるにつれて、それらの事物はますます意味合い豊かなものとなり、私たちは、謎めいたこの作品に、ますます捕らえられていくのです。

奥の部屋には、豪華な家具や壁に掛けられた絵が見えます。この絵もまた非常に意味深長で、そこには背中を向けた若い女性の姿があります。「画中画」の主題は17世紀オランダ風俗画に非常に頻繁に登場しますが、それによって、画家は、描かれた情景に微妙な意味を加えることができるのです。この作品は、伝統的な家庭の情景を描いた風俗画に関する画家の考察の結果であると同時に、画面にあたかも実際の奥行きがあるかのような、優れた空間表現にもなっています。
見える空間と見えない空間
絵の中の空間の構造は、3枚の扉の戸口と一致する、3つの枠の連続から成りたっています。3枚の扉は短縮法で描かれていますが、逆光で見える掛け金のモチーフと鍵の束のおかげで一層明らかに見てとれます。繊細な光の効果や、光の描き方における濃度の変化、そして影、といった点から、ガラス窓か、半開きの鎧戸、または半分に引かれたカーテンが、絵を見る者には見えない空間に、存在していることをほのめかしています。画家はこのようにして、我々に、絵を見る者の役割や、視点について問いかけさせようとしているのです。
オランダから離れたレンブラントの弟子


サミュエル・ファン・ホーホストラーテン
《ペンを持つ自画像》
ドルトレヒト美術館蔵

Dordrecht, SIMON VAN GIJN - museum aan huis
サミュエル・ファン・ホーホストラーテンは、ピーテル・デ・ホーホやヨハネス・フェルメールと同じく、17世紀オランダ風俗画を代表する画家です。ドルトレヒト出身のホーホストラーテンは、15歳から、アムステルダムのレンブラントの工房で学びます。彼は、オーストリアやイギリスの宮廷に滞在し、国際的なキャリアを築きます。肖像画家、並外れただまし絵の発明者、文学者、と様々な面を持つ芸術家であった彼は、卓越した理論家でもありました。彼が人生の晩年に著した『絵画芸術の高等画派入門』は、17世紀のオランダ絵画を研究する為には基礎的な著書です。この概論の中で、ホーホストラーテンは特に遠近法の問題に取り組んでおり、ここで彼はすばらしい研究を成し遂げています。
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