前期展示作品
《ホンディウスの地球儀・天球儀》

地球儀
							ヨドクス・ホンディウス(父)
							1600年
							アムステルダム、オランダ
							直径42cm
							幅47cm、高さ50cm
							紙・印刷

天球儀
							ヨドクス・ホンディウス(父)
							1600年
							アムステルダム、オランダ
							直径42cm
							幅47cm、高さ50cm
							紙・印刷
同一サイズの一対をなす地球儀と天球儀は、オランダにおける地図製作の輝かしい黄金時代(1590−1640年頃)に、宇宙の縮小モデルとして考案されました。この頃、ネーデルラント連邦共和国(当時のオランダの正式名)が遠隔地と行なっていた海洋貿易は、大きな経済効果をもたらしていました。こうした地球儀と天球儀は、その航海のための道具であると同時に、新世界との貿易の発展の象徴でもありました。
					アムステルダムでは、ファン・ラングレン、ブラウ、ホンディウスの3家が地球儀製作の市場でしのぎを削っていました。ここに展示されている地球儀と天球儀は、ヨドクス・ホンディウス(1563−1612年)が1600年に、ライバルのウィレム・ブラウの作品に対抗するかたちで製作したものです。とりわけ天球儀は、ブラウが版画装飾に起用していた画家ヤン・ピーテルスゾーン・サーンレダムのバロック様式に大いに倣ってつくられています。この地球儀と天球儀は、フェルメールの著名な2点の絵画《地理学者》と《天文学者》の中に描かれている、まさにその作品です。
《アラブの天球儀》

天球儀
							ジェム・アルエディン・モハメッド・イブン・モハメッド・エル=ハシミ・エル=メキ
							1573年
							メッカ、サウジアラビア
							直径12cm
							銅・エッチング
中世において、古代ギリシアの伝統を受け継いだアラビアの科学は、天文学を大きく進歩させました。1573年にメッカで製作されたこの天球儀はその遅い作例です。蝋を用いたロストワックス法で、ひとかたまりに鋳造された銅の合金の表面には、位置はいくらか不正確なものの、およそ900個に及ぶ星が銀を嵌め込んだ点で示されています。この種の小さい天球儀は、概して天文学の論文を読む際の補助に使われていました。
《バラデルの地球儀》

地球儀
							ジャック・バラデル
							1743年
							パリ、フランス
							直径24cm
							幅37cm、高さ50cm
							紙・印刷
18世紀、地球儀製作は、ますます増加する需要に応じて発展していきます。ブルジョワ階級のサロンや知識人の図書室、教育機関にも置かれるようになり、地球儀製作者たちは多様な顧客のために、幅広いタイプの品を開発しました。それらは有力者に向けた床置きタイプの大型で豪華なものから、地理学研究のための基本的な必要性に応じた、シンプルな構造をもつ簡素で小さな卓上タイプの廉価版にまで及びます。1743年、パリの科学機器製作者ジャック・バラデルが製作したこの小型の地球儀は、啓蒙時代の精神をよく表す普及版地球儀の完璧な例です。
《チュリーの地球儀》

地球儀(レリーフ加工)
							チュリー
							1855年
							パリ、フランス
							直径31cm
							幅42cm、高さ60cm
							厚紙・印刷とレリーフ加工
1855年のパリ万博で賞を獲得したこのレリーフ加工の地球儀は、フランス人の教師チュリーが構想し、特許を得たものです。同時代の他の地球儀と一線を画している点は、世界中の主要な山脈を革新的な型押しの技術で隆起させ、レリーフ状に表現しているところにあります。この技術によって、印刷された地球儀としては初めて、山々が視覚的にだけでなく、触覚的にも知覚できるかたちで表されたのです。
※いずれもパリ、フランス国立図書館蔵
 
					©origin of source Gallica / Bibliothèque nationale de France
				



