感覚をひらくイベント情報

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※左_湯山玲子/右_島田雅彦

第5回

開催日時:2013年7月13日(土) トークショウ:14:30〜16:00

『なぜ? 男は集い、酒を飲むのか
〜古代ギリシアから立ち飲みバルまでの事情〜』

 ギリシア神話の一場面が描かれた第10回展のメイン作品、《アンタイオスのクラテル》(壷)。これは当時、お酒を飲みながら政治や恋愛などさまざまなことについての談義を楽しむ男性だけの宴会、「シュンポジオン」(現代のシンポジウムの語源)で、葡萄酒と水を混ぜるために使用されていたものです。今回の「感覚をひらくイベントvol.5」にお迎えしたのは、著述家の湯山玲子さんと、世界の酒場文化や、古代ギリシアにも造詣の深い小説家の島田雅彦さん。湯山さんのナビゲートのもと、ホモソーシャル概念(男性同士の強い連帯関係)などさまざまなトピックについて、古代ギリシアと現代を行き来するトークが繰り広げられました。

 シュンポジオンは、詩人や政治家など地位の高い人だけでなく、奴隷や外国人も紛れ込んでくる“階級を超えた集まり”でした。島田さんは、「そこでは、酒の力を借りて本音やわだかまりをぶつけ合っていたんです。現代の“シンポジウム”も、時には形式張った良識を捨てて議論をぶち壊すことがあったほうが語義に近いのかもしれないですね」と話します。  また、トピックは、湯山さんの「文壇の形成に現れているように、ホモソーシャル概念は文化系男子のあいだで受け継がれている」というお話から、アメリカなどの学生間に今も多く見られる男子社交団体、「フラタニティ」へと展開しました。「Facebookの開発の背景にも、開発者であるマーク・ザッカーバーグ氏の、フラタニティへの反発心があった。現代社会にある、そういった排他的な階級意識は、ギリシアのホモソーシャル概念がルーツになっているのでは」と島田さん。ほかにも、音楽や美術、建築などの芸術と数学の関係やユニークなギリシア神話のエピソードなど、トークは広く展開。参加された皆さんは、独特の観点で語られるおふたりのお話に、熱心に耳を傾けていました。

島田 雅彦 Masahiko Shimada

1961年、東京生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語卒業。1983年『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー。法政大学国際文学部教授。2011年より芥川賞選考委員。近著に『悪質』『英雄はそこにいる』など。
http://shimadamasahiko.com/

湯山 玲子 Reiko Yuyama

文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代から、50代まで、全世代の女性誌にコラムを連載している。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降の生き方』(幻冬舎)、『ベルばら手帖 マンガの金字塔をオトナ読み』(マガジンハウス)を上梓。月一回のペースで、爆音でクラシックを聴く、「爆クラ」イベントを開催中。(有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。
https://yuyamareiko.typepad.jp/

※左_西谷真理子/中_坂部三樹郎/右_堀内太郎

第4回

開催日時:2012年9月1日(土) トークショウ:14:30〜16:00

『ファッションデザイナーがアートに出会うとき』

 第9回展で来日した、ゴヤの《青い服の子供》は、イヴ・サン=ローランとそのパートナーのピエール・ベルジェが愛蔵していた作品として知られ、彼のクリエイションには、本作品をはじめ、自身が収集した数多くのアート作品が影響を及ぼしたと言われています。そこで今回の「感覚をひらくイベントvol.4」は、『ファッションデザイナーがアートに出会うとき』と題して、ファッションとアートの関係について、ファッションエディターの西谷真理子さんをナビゲーターとして迎え、今もっともアートに近い注目のファッションデザイナーの坂部三樹郎さんと堀内太郎さんにお話を伺いました。

 坂部さんと堀内さんの共通点は、アントワープ王立美術アカデミー出身であること。同校は、ファッションを始め、写真、彫刻、絵画など、様々な表現を学ぶ、芸術アカデミーとして世界に名を馳せています。そこでアントワープで培った自身のアート性について西谷さんから質問が飛ぶと、堀内さんは「僕はアート作品を観るとき、純粋に好きか嫌いかで判断していたんです。ところがアントワープで学ぶなかで、アートは自分のインスピレーションの源の一部であるという見方に変わっていきました」との答えが。

 一方の坂部さんは、「アントワープは街自体が日本と違っていて、とにかくエンターテインメントがあまりない小さな町。だからその分、自分と向き合う機会がいろいろなところに転がっていて、何を作りたいのか?という、自分のなかのアートを導くきっかけに繋がった気がします」。

 世界を知るファッションデザイナーの目線から見るアートは、独特の視点と面白さを携えていて、ファッションとアートの親密な関係と、そこから生まれる可能性が浮き彫りになったトークショウでした。

坂部 三樹郎 Mikio Sakabe

2006年アントワープ王立芸術アカデミーファッション科首席卒業。07-'08 A/Wコレクションをパリコレクションに プレゼンテーションという形で公式参加。2011年S/S 代々木体育館で現代アーティストChim↑pom とコラボレーションショーを発表。2011年A/W TUTAYA六本木でコレクションと秋葉原アイドルでんぱ組.incのライブを混じえたショーを発表2012年A/Wベルサール渋谷ファーストで行なったショーでは初のメンズコレクションを発表、東京から世界に発信できるあたらしいジェンダーを提案。
MIKIO SAKABE http://www.mikiosakabe.com

堀内 太郎 Taro Horiuchi

1982年東京生まれ。15歳でイギリスに渡る。ロンドンキングストン大学で写真を専攻。その後、服飾科に進む。2003年アントワープ王立美術アカデミーに入学。2007年同校を主席で卒業。イタリアのコンペティションITSでディーゼル賞を受賞。DIESELとのカプセルコレクションを発表。21_21DESIGN SIGHT 東京ミッドタウン「ヨーロッパで出会った新人達」展参加。2008年渡仏。2009年に帰国後ブランド「TARO HORIUCHI」を立ち上げる。服以外にもジュエリー、家具、アートピースの制作を行っている。
TARO HORIUCHI http://www.tarohoriuchi.com

西谷 真理子 Mariko Nishitani

1974年文化出版局入社、1980-82年パリ支局勤務。『装苑』『ハイファッション』などに在籍し、副編集長を務める。雑誌休刊後、2010年から'12年6月までハイファッションのウェブマガジンのチーフ・ディレクター。編著に『ファッションは語りはじめた』(フィルムアート社)、『感じる服 考える服:東京ファッションの現在形』(以文社)がある。

※左_宮津大輔/右_中島英樹

第3回

開催日時:2012年6月23日(土) トークショウ:15:00〜16:00

『アート作品と私』

 スペイン画家の巨匠ゴヤが描いた肖像画《青い服の子供》が初来日した、ルーヴル – DNPミュージアムラボ第9回展。本作品は、イヴ・サン=ローランの死後にルーヴル美術館に寄贈されるまでは、長年、個人の所有者たちに愛され続けてきました。今回の「感覚をひらくイベントvol.3」では、『アート作品と私』をテーマとして、日々アートに触れているアートディレクターの中島英樹さんとアート・コレクターの宮津大輔さんに、「アート作品」と自身との関わりについて、お話を伺いました。

 トークはまず、宮津さんナビゲートのもと、中島さんのお話から。「ゴヤも《青い服の子供》を描くことはスポンサーワークです。僕もスポンサーワークのなかで、日々自分の表現というものをやらせていただいている」と言う中島さんは、これまでデザインを手がけてきた、野口里佳、森山大道、草間彌生などの作品集を紹介。アーティストとどのような対話を重ねながら、共に作品集を作り上げてきたのか、その裏話も伺いました。
 一方の宮津さんは「私が初めて購入したアート作品は、草間彌生さん。大学生の頃に草間さんの作品を観て、宇宙を感じたんです」と、自身がアート・コレクターになるきっかけを紹介。「現代アートとは、今生きているアーティストの作品です。だからこそ自分が直接アーティストと交流できる機会も多く、それがとにかく面白い。」と、宮津さん。その想いは中島さんも共通しており、作品、そしてその作品を生み出したアーティストとの直の交流がいかに人生を豊かにしていくか、そんな話題で最後を締めくくりました。

宮津大輔 Daisuke Miyatsu

アート・コレクター、京都造形芸術大学非常勤講師
サラリーマンである傍ら、収集したコレクションや、アーティストと共同で建設した自宅が、東京オペラシティアートギャラリー、デリム現代美術館(韓国・ソウル)での展示をはじめ、国内外のメディアで紹介される。
2011年MOCA TAIPEI(台湾・台北)で大規模なコレクション展、2012年6月BEXCO(韓国・釜山)で映像作品コレクション展を開催。著書に「現代アートを買おう!」(集英社新書/中国語・繁体字版・台湾Uni Books)他。
https://www.facebook.com/DaisukeMiyatsu.Collector

中島英樹 Hideki Nakajima

1961年埼玉県出身。1995年に有限会社中島デザインを設立。ニューヨークADC賞、東京ADC賞受賞、他多数の受賞がある。ボストン大学、フランス国立図書館(BnF)、リヨン印刷博物館、広州美術館(GDMoA / 中国)、CCGA現代グラフィックアートセンター(福島)に作品が所蔵されるなど、そのグラフィックデザインは国内外で高い評価を得ている。
AGI、ニューヨークADC、東京ADC、東京TDC会員。
広島の大和プレス ビューイングルームにて、8月31日まで、個展を開催中
https://www.nkjm-d.com/

※左_高木正勝/右_小林達雄

第2回

開催日時:2012年2月4日(土)トークショウ:14:30〜16:00

『妄想で愉しむ儀式と伝承、そして音』
─目に見えないものとのかかわりについて─

 来世を信じた古代エジプト人。ルーヴル - DNPミュージアムラボ第8回展では、そんな彼らが来世での食事に困らないために作り上げた葬礼にまつわる展示を企画。約3000年かけて守り続けられた葬礼の背景には、儀式と伝承というキーワードが浮かび上がってきます。そこで第2回目となる「感覚をひらくイベント」では、この儀式と伝承というテーマを軸に、縄文考古学者の小林達雄さんと映像作家であり音楽家の高木正勝さんを迎え、古今東西の「見えないもの」の世界へと妄想を繰り広げてもらいました。

 トークは、縄文時代と今を生きる私たちを繋ぐものをテーマに、様々な視点で語られていきました。なかでも「祈る」という行為に代表されるように、人は何を心の拠り所にするのか?というテーマに対して、印象的な話題に。
「縄文人にとっての拠り所は、土器や土偶という存在でした。つまり土器や土偶には、縄文人の祈りや詩情が表現されていたというわけです。それを縄文人は制度にし、文化とすることで、納得する生き方をしてきた」。(小林)
「拠り所といえば、僕にも自分だけのおまじないがあります。夜寝る前に必ず“今すぐ○○○できた“って唱えて寝るんです。すると身体が勝手に準備してくれるみたいで、次の日は作り途中の音や映像が本当にできてしまうんです」(高木)
 その後も、高木さんが関心を抱く“オノマトペ”も、日本語特有であり、ルーツを辿れば自然もことばをもつとする縄文人的な思想から来ていることなど、教科書では知ることのできない、貴重なお話をたくさん伺いました。

小林達雄 Tatsuo Kobayashi

1937年新潟県生まれ。文化庁文化財調査官などを経て85年、國學院大學教授。縄文人の世界観から土器文様を読み解くなど従来にない視点から問題提起を続ける縄文研究の第一人者。新潟県立歴史博物館名誉館長。著書に『日本原始美術大系I 縄文土器』(講談社)『縄文文化の研究』全10巻(編著、雄山閣)『縄文土器大観』全4巻(編著、小学館)『縄文土器の研究』(小学館)『縄文人の世界』(朝日新聞社)などがある。

高木正勝 Masakatsu Takagi

映像作家/音楽家。CDやDVDのリリース、美術館での展覧会や世界各地でのコンサートなど、分野に限定されない多様な活動を展開している。オリジナル作品制作だけでなく、デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアーへの参加、UAやYUKIのミュージック・ビデオの演出や、理化学研究所、Audi、NOKIAとの共同制作など、コラボレーション作品も多数。Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人100人」の一人に選ばれる(2009)など、世界的な注目を集めるアーティスト。http://www.takagimasakatsu.com

※キーボード、アコーディオン_阿部海太郎/オーボエ_崎本絵里菜/ファゴット_中田小弥香

第1回

『妄想で聴く18世紀フランス音楽』

作曲家の阿部海太郎さんと編集者の菅原幸裕さんをお迎えし、18世紀当時のポピュラー音楽ともいえる「バロック音楽」をテーマにイベントは展開されました。主に、フランス宮廷内では日常におけるBGM的存在でもあったというバロック音楽の中で、クープランとラモーという作曲家を中心に、二人の独自の視点で曲のタイトル表現や作曲の特徴などを紹介する内容に。会場にお持ちいただいたたくさんの楽譜やタイトルを眺めながら、今でも斬新と思える創作の視点を探り、お話は自由に広がりました。また、古楽器(※)を含む編成での生演奏もあり、当時の晩餐会や宮中でこのような音楽が聴かれていたかもしれない、と妄想してしまうような楽しいイベントになりました。

阿部海太郎 Umitaro ABE

作曲家。これまでに、シアタープロダクツのファッションショーや、D-BROSの映像作品の音楽を制作。現在はコンサート活動の他、サウンドトラックの分野でも活動の幅を広げ、蜷川幸雄演出の舞台シェイクスピア作品、映画『ホノカアボーイ』、花王ソフィーナ・ボーテのCF音楽などを手がけている。

菅原幸裕 Yukihiro SUGAWARA

編集者、ライター。雑誌『エスクァイア日本版』に約15年間在籍。「ピアノ300年、音楽の真相」など、クラシック音楽に関する特集を複数担当した。また、エスクァイア日本版の傍ら、高級紳士靴の雑誌『LAST』を創刊する。現在は企業のPRとして書籍の刊行などに携わるほか、編集に関連する様々な活動を行っている。

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